『かがり火ライブ -深谷薪能の夕べ-』の様子を一部公開いたします。
古代中国、魏の文帝の時代、酈縣山の麓から霊水が流れ出るというので、勅使が源を尋ねるべく、その山に派遣されます。勅使の一行は、菊の花の咲き乱れた山中の庵に、一人の不思議な少年を見つけます。勅使が「人間の住まないような山奥にいるお前は化生の者か」と尋ねると、少年は「あなたこそ化生の者でしょう。私は周の穆王に仕えていた侍童です」と答えます。勅使は「周というのはもう数代も前の世だ」と驚きます。話を聞くと、少年は、穆王に召し使われていたが、誤って王の枕をまたぎ、その罰でこの山に配流されます。しかし、少年に悪意のないことを知って憐れんだ王が、その枕に二句の偈(仏徳を讃えた詩)を書きそえて与えました。その文字を菊の葉の上に写して書くと、その葉の露が霊薬となり、それを飲んでいたため、少年は七百年後の今でも若いままで生きながらえていたのです。少年自身も、自分の長命に驚き、楽しく舞を舞ったあと、寿命を帝に捧げ、そのまま山中の仙家へと帰ってゆきます。
(「名古屋春栄会|演目紹介:枕慈童」より)
※これらの写真は金沢能楽会から許可を戴いて掲載しております。著作権は、元湯石屋および金沢能楽会に帰属します。
※無断転載、無断コピーなどはおやめください。